甲斐駒ケ岳・仙丈ケ岳の山旅(2007・8・6~9 )

猿渡生祥 (13期愛甲氏ご学友)

 小梨平で合宿の皆に別れ、濃霧の槍ヶ岳の悔しさを思い出に上高地を下る。8月2日に家を
出て今日は8月6日、ようやく現れた真夏の空の下、伊那の高遠へ向かう。途中で伊那の名物
ソースカツ丼を取る、カツ2枚分が載っておりスタミナ回復と無理して食う、今日から明日は
休養である。
 
翌朝はゆっくり戸台口の駐車場に車を停め、北沢峠から今夜の宿の仙水小屋に向かう。広河原
から来る友を待つ間、小屋の人にすすめられ仙水峠まで散歩に出かける。樹林帯を抜けると
駒津峰斜面の黒い岩塊の谷間を進むようになり、咲き残った石楠花が数輪木の間に見えるなか
仙水峠に着く。見上げた甲斐駒と摩利支天はあっという間に上がってきたガスの中に消える。
岩に腰を降ろししばらく待つが、今日はもう姿を見せるつもりはないようなので諦めた。
 
仙水小屋の夕食は、評判通り山小屋としては豪勢で、本ワサビ付きの刺身がでた。朝も3時半
から食事が出るし、30人しか泊めないし、小屋は粗末だがこれで6,500円は安い。
 
一人が急遽来れなかったので我パーティーは二人である。仙水峠からの甲斐駒と摩利支天は、
圧倒的な姿を見せている、しばらく楽しんで駒津峰への直登にかかる。ほとんど踊り場も無い
樹林の中である。駒津峰から見る甲斐駒は、白い岩肌を忽然と聳えさせ、挑戦的に迫ってくる。
我々は巻き道を取らず、岩場の直登で、息を継ぎながら喘ぎながらの登りのある尾根筋の直登
を選ぶ。苦しく、緊張を強いられるが、巻き道を行く登山者を見ながら確実に高度を稼ぐ。
後で、分岐で別れた登山者から25分は違ったと言われた。
 
甲斐駒の頂上は素晴らしかった、快晴とはいかないが360度の展望を見せていた。しかし、
槍ケ岳と穂高の頂上付近はまだ雲があり、残念な思いで眺めていた。頂上から降りながら、
昔中央線の車窓から何度か仰ぎ見た甲斐駒に今登ったのだと感慨ひとしおだった。
 
北沢峠に下り、今夜の小屋は大平山荘である。
大平山荘の朝食は6時であり、早立ちでは当然弁当になる。我々も4時ごろヘッドランプ付けて
出立する。重幸新道の樹林帯をゆっくり登る、しばらくして道は藪沢に沿う、シナノキンバイや
フウロウや名も知らぬ花が迎えてくれる。
 
仙丈ケ岳は田中澄江さんも言う花の山だ。藪沢小屋から馬の背ヒュッテの沿道にお花畑が現れる、
イワギキョウが固まって咲いている。雪渓が残る藪沢カールが明るく開け、頂上が見える。中央
アルプスの山々と御岳が見える、素晴らしい 天気だ。仙丈ケ岳の頂上の展望は素晴らしかった。
目の前は北岳が翼を広げ、我々を招いているように見える、御岳の右手はるかに白山が見えると
教えてくれる。白山は7月19日・20日に登り、楽しんだ、噂通り花の山だった。
東は富士から秩父連山、浅間の煙が見え、八ヶ岳、北アルプスも今日は雲がなく槍・穂高もすっ
きり見える。南アルプスは静岡の方へ山並みが連なり、雄大な山容を見せている。甲斐駒ケ岳は
摩利支天を伴い白く輝いている、私は八日間の山旅で最高の幸運に恵まれたのだ。
 
小仙丈ケ岳から北沢峠へ向かう、仙水小屋で一緒だった単独行の野口さんと女性二人がいつの
まにか同行者になっていた。峠には12時頃到着、13時のバスで戸台口に降りる。戸台口にある
仙流荘の温泉で長旅の汗を流し、伊那ICへと車を走らせた。