小海からのマイクロバスはほぼ満員でしたが、なんだか楽しそうな名前のなヤッホー
の湯でぞろぞろ降りてしまい、稲子湯へ向かったのは山登の格好をした3人でした。
本沢温泉に向かう男性と別れ、10時20分宮本さんと二人ニュウを目指し登山口を
出発しました。
細い山道にシャクナゲが覆いかぶさり、時折ザックにつけてあるストックが枝にから
みました。花の頃は人も多いのでしょうが、道はそれほど踏み固められておらず、ふ
かふかしているところもあります。足元にはうつむいて咲くコバノイチヤクソウ、オ
サバグサやマイヅルソウの軟かそうな葉、白い花びらは落ちてしまったゴゼンタチバ
ナ、見上げるとナナカマドが目につきました。珍しく鳥の声も聞こえず風の音もな
く、歩みを止めるとしーんとしてしまい、眼を閉じていると周りも自分もなんとなく
軽くなるような気分でした。
乳とも書いてあるので何かが湧いていたのかと思いながら、13時40分ニュウにた
どりつきました。頂上は大岩があり周りはぐるっと樹海が広がっています。高所恐怖
症ながら下を見たくなるので、ここでも岩につかまり腰を引きながら覗き足もとが切
れ落ちているのを確認しました。さっとひと撫でしたくなるような木々の間にこれか
ら向かう白駒池が小さく見え、高見石小屋の赤い屋根もつまめそうでした。後でわ
かったのですが、晴れていればちょうど岩の間に富士山が見えるはずです。
ごろごろしている岩が苔と木に覆われる中、時節柄キノコが生えていました。麦草
ヒュッテでは「食べられるキノコだったら今頃残っていない」と言われ、翌日すれ
違ったツアーのガイドさんが「キノコは図鑑を3冊並べてもわからないし、本によっ
て食用か毒かも違っている」と説明しているのを聞くと、おいしそうでも見るだけが
よいと納得しました。
シラビソ、オオシラビソどこが違うのかしらと話しながら湿原を通り、木道もある平
らの道をずいぶん歩いてから、静かに波立っている白駒池に15時到着しました。心
は泡立ち始めましたがぐっと抑え、目的地の麦草ヒュッテに向かいました。笹の斜面
はトリカブトの紫が風に揺れ、紅葉したフウロソウの葉も色を添えています。東屋の
傍らににたたずむ人影は同期の吉本さんで、久しぶりに三人揃いビールで乾杯した時
には、静かな夕靄でした。
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